ウチの考えた本当に怖いシン・ゴジラ

 『シン・ゴジラ』は進化前で勝負して欲しかった!というのを書きましたが、また小学生的に「ウチの考えた本当に怖いシン・ゴジラ」を書いてみましょう。

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(特にゴジラとは関係ない化けモンの絵)

 まずですね、ゴジラは東京なんか来ません。そんな記号化されて絵になる場所には来ないんですよ。
 というか、予めお話しますと、これ別にゴジラじゃないです。なんかデカイ生き物ですね。巨大不明生物です。
 それは『シン・ゴジラ』で最初に蒲田あたりをぶっ壊していた地面を這いつくばるヤツで、とにかく馬鹿でかいけれど知性も工夫もなく、ビームなんかも出せず、ただいたずらに地面を這いまわってゴロゴロしているヤツです。それでも十二分な破壊力で、蒲田なんか木っ端微塵です。行進なんかしてもムダ。蒲蒲線言うてる場合ちゃうで。
 前の時も書きましたが、ゴジラ完成形のあの形になった途端、それは記号になって、閉じた物語に回収されてしまうんです。ゴジラvs自衛隊みたいな。まとまりが良いわけです。
 進化前ゴジラはそうじゃないんですよ。ちょっとアレ、抱きまくらとかにしてみたいですもん。あんなのに殺された日にはホンマ浮かばれないですよ。でも人が死ぬってそういうことですよ。大概、浮かばれないですから。餅を喉につまらせたりとか、酔っ払ってホームから落ちたりとか、そこに何の物語も意味もありません。
 それでですね、このつぶらな瞳で図体だけでかい困った生き物が上陸するのは、岡山です。
 なぜ岡山かと申しますと、知り合いが住んでいてよく「大都会岡山」をネタにしているだけで、特に意味はございません。この意味がない、というところが大事です。意味なんかないんですよ! 相手はケモノですよ。大自然ですよ。意味なんかない。理由なんかない。まったく、何の筋もカラクリもなく人びとの生活が破壊され、家族の命が奪われる。それこそが災厄というものでしょう。強いていえばきびだんごが大好物だったんでしょうね。知りませんけど。
 わたしは岡山は一回しか行ったことがないんですよ。京都に住んでいた若いころの話で、行った理由が交流会です。
 この交流会というのは武道関係の交流会でして、まぁ交流会というとなんかお話とかするのかなぁ、仲良くなるのかなぁ、という感じがしますけれど、実際やることと言ったら、会っていきなり殴り合いですよ。まだ名前も聞いてないっちゅうねん。好きな食べものとか飼ってるペットの種類とか、そんなの一切なしですよ。意味わからんっちゅうねん。何の交流やねん。
 そういうわけで、個人的に岡山に関する唯一の思い出は実に意味がわからない感じで、実に化けモン的なわけです。そういうわけで、岡山には可哀想ですが、ゴジラ行ってもらいます。
 そんで岡山ボッコボコですよ。
 岡山といっても、岡山市とか倉敷市じゃないんでしょうね。備前市くらいの、なんか中途半端なところにひょっこり上陸して大暴れです。
 きびだんご食べても家来になんかなりませんよ。
 そんな話の通じるヤツじゃないんです。きびだんご食べたよね? だからもう友達だよね? 一緒に鬼退治行くよね? みたいな交流は全然ないです。食べるだけ食べて挙句、のたうちまわって皆殺しです。キレるひきこもりかっちゅうねん。
 これはもう、大ニュースです。NHK職員がたまたま居合わせて、ネットに映像とか出まわるわけです。
 でもほとんどの日本人は岡山県民ではありませんから、ネットで見てても「プゲラwww」みたいな状態ですよ、まだまだ。対岸の火事です。
 政府だって、対策本部とか立ててどうするこうする話し合いますけど、今ひとつものごと決まりません。東京に来た『シン・ゴジラ』だって最初は歯切れが悪かったでしょう。まして岡山なら、もう引き延ばせるだけ引き延ばしたいです。
 そんなこんなでグダグダやってるうちに、備前市は壊滅して、化けモンの方も疲れて一回海に帰ります。

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(特にゴジラとは関係ない化けモンの絵)

 するとどうなるか。
 『シン・ゴジラ』では「次に来たらシャレにならん、駆除しないとアカン」みたいに真剣に話してますけど、まだやられたのは備前市だけです。それももう海に帰りました。そうなるとですね、きっと復興とかは頑張ると思うのですが、「もう一回来たらどうしよう」みたいのはあんまり考えないはずなんですね。
 いや、考えないことないんですけど、考えたくないんです。大変だから。面倒だから。
 考えて考えて、やっぱり来なかったら考え損じゃないですか。
 だから「いやぁ、大変だった。備前市の皆さんお気の毒です。復興支援します。絆!」みたいに盛り上がって、古着とか缶詰とかはガンガン送られてくるんですが、次にまた化けモン来たらどうしよう、みたいなところはタブーみたいになるんですね。ネットでそういうこと言うヤツがいるとフルボッコですよ。妄想乙!みたいな流れです。
 でも、しばらくするとまた来るんです。
 進化して強くなってるかというと、別にしてないです。相変わらずゴロゴロするだけです。特にね、工夫はないんです
 パンチを打ってダメだったらどうするか? もう一回打つんです。そういう発想ですよ、ヤツは。
 わたしの好きなマンガに島本和彦の『炎の転校生』というのがあるんですけど、この中で悪の組織みたいのが運営している大陸学園という移動する学校に突入するシーンがあるんです。確か秘密教育委員会とかいう正義っぽい人たちですね。で、屋上から入るんですけど、そこから下に下りようとすると、ドアに電流が流れててビリビリ来るんです。じゃあどうするか? 電源切るか? ドアごと破壊するか? すると「我慢して開けよう!」って言うんですよ。ビリビリ来るけど、頑張れば開けられる!みたいな。ここ、すごく好きなシーンなんですけど、人間もアホですし、化けモンもアホです。進化とかね、そんなね。二万年くらい貰わないとちょっとね
 ちなみに島本和彦さんは奇しくも『アオイホノオ』で庵野秀明との因縁をネタにしていますが、わたしに言わせれば島本和彦の方が全然勝ってますよ! 彼の失敗は唯一、『炎の転校生』を12巻でやめてしまったことです。あそこは無理やりにでも続けるべきでした。悪いことは言わないので、今からでも続編を描いて下さい。
 で、ゴジラっぽい化けモンの話ですが、今度上陸するのは淡路島です。
 またシブいとこ来ましたね。なんで淡路やねん。
 もちろん淡路島には沢山の方が暮らしてらっしゃるし、伝統とかコミュニティとか色々あるわけです。でも化けモンには関係ありませんね。木っ端微塵です。
 淡路島の尊さは千代田区の尊さと変わらない筈なのですが、政府官邸はそんな風には動けません。建前ではそう言いますけど「淡路島くらいで済むなら」くらいに思っちゃうんですよ。いっそ「淡路でうまいこと捕獲してゴジラランドとかにすれば中国人観光客を呼べるかも」とか思っちゃうんですよ。
 それでグダグダです。決断できません。
 自衛隊のヘリとか来るけど、見てるだけです。
 そんなグダグダやってるうちに動物愛護団体が「殺すな」とか騒ぎ出して、主要各国からも「貴重な生物だから」とかなんとか、変な横槍が入るわけです。政府は建前では怒ったフリをするんですけど、「いやぁアメリカが言うからすぐ殺すわけにも」みたいにナヨナヨしてるわけです。
 淡路島といえば阪神淡路大震災を思い出しますけど、あの時も長田区の話ばっかりで、同じく壊滅的被害を受けた淡路島のことは随分扱いが小さかったですよね。あんなもんです。高速道路がバッター倒れたりとか、絵になるもんがないと食いつかないんです。淡路の畑とか荒らされてもね
 で、そうこうしているうちに、化けモンはのたうちまわって淡路島壊滅、そこから更に北上するわけです。
 ここらへんで、ちょっとだけ「お、ヤバくね?」みたいのが始まります。対岸は明石、ちょっと行けば神戸、大阪です。少しね、ヤバイ感じがしてきます。
 化けモンは一回水にボチャンとするんですけど、ああこれはマジで本州再上陸狙ってるわーみたいな展開になります。
 問題はどこに来るか? 南港にあがって海遊館とか踏み潰すのか?
 そう思ってると、上がってくるのが尼崎です。
 尼崎、大都会です。
 でもね、アマって言ったら関西ではアレですよ。ダウンタウンの故郷で、色々アレな人がアレなところです。
 思い出しますけど、わたくし、学生時代にレンタルビデオ屋さんでバイトしてたんですね。京都の。そこはね、スジの方のお客さんとか多くて、結構怖かったんですよ。
 で、そこに働いてた人にアニメオタクの人が結構いて、その一人がちょっと太めな尼崎出身の子だったんです。アニメオタクで小太りといったら、なんかこう、気弱そうなイメージあるでしょう? でも全然違いましたね。スジの人とか来ても全然ビビらないし、実にしっかりしてるんです。「アマの人間ナメたらあかんですよ」って言ってました。まぁ、アマってそういうとこです。
 で、化けモン来るから尼崎の人は怒るんですけど、結構面白がっちゃう人とかもいると思うんですよね。どうせワイの家ダンボールやし、壊せるだけ壊したらええやん、みたいな。いや、その人だって町がなくなったら困ると思いますよ。でも困ることのリアリティがグッと薄いんですよね。なんかもう、考えるの面倒くさいし、バッサーやってもうたらええやん、知るかいな、みたいな。
 それでアマの人間がバッタバッタ殺されてくんですけど、まだ政府は動きません。ネットでも「ナマポが死んで良かった」みたいなこと言う人が沢山いるわけです。
 ただ、近所の人間は結構ピリピリしています。この後、東に行けば大阪、西に行けば神戸ですからね。そりゃ気が気じゃありません。
 大阪のもんは「西行け西!」って思ってます。お高くとまりやがって、神戸なんていてもたれ!みたいな。
 神戸の人は「東行け東!」って思ってます。小麦粉ばっか食べよってだから顔ばっか膨らむねん!みたいな。
 でもそんな事情と関係なく、化けモンは一通り暴れた後、とりあえず大阪行きます。特に意味はありません。

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(特にゴジラとは関係ない化けモンの絵)

 で、通天閣とかぶっ倒すとそれなりに絵になるんですけど、上陸するんだから海ですね。大正区に行きます。
 大正区ってわかりますか? 東京の人はピンと来ないかもしれませんけど、沖縄出身の人が多いエリアですね。大阪出身のボクサーはかなりの確率で大正区出身です。そういう場所です。
 でもボクシング強くてもゴジラはどうにもなりません。「かかってこいやゴラァ!」みたいな酔っぱらいのおっちゃんもいるかもしれませんけど、ゴジラはガン無視です。そんなん言われても、かかっていくどころか聞いてもいません。知るかってもんです。
 こうなると、大阪市長とかはさすがにビビります。こら化けモンいてもたらんともう後がないで、という。この市長は、やっぱ橋下徹さんみたいな人がいいですね。
 橋下さん、嫌いな人が多いですね。その気持ちはわかりますよ。まぁあんまり品の良い人じゃないと思います。
 でもこういう人を支持する人の気持ちというのも、これまたよくわかります。大阪を知っている人間なら理解できる筈です。毒を持って毒を制すというか、キレイ事では済まんものがあるわけです。ああいうね、ちょっと無茶するくらいの業の深い人が必要な時もあるんです。
 で、橋下さんだったら激おこですよね。政府の弱腰をボッコボコにします。大阪は盛り上がりますよ、橋下言うたってくれ! 東京モンにガツンと言うてやってくれ!って。
 それで政府も流石になんとかせな、みたいな流れになるんですけど、大正区が壊滅した後、化けモンは北上せずに西成の方に行くんです。あの西成です。
 そうなるとですね、またネットで「大掃除や」みたいに盛り上がるヤツが出てくるんですよ。政府もまたグズグズし始めます。
 西成がボッコボコにされて、また堺の方とか行くわけですよ。中途半端やなぁ。梅田とか難波とかは行かんわけです。
 ここらへんになると、なんか自衛隊のヘリとか来て、マシンガンの化けモンみたいのでパシパシ撃ったりするわけですけど、そんなもんじゃ止まりませんわな。ああもうどうするか、デカイ爆弾でふっとばすのか、いやそんなことしたら堺市が、みたいなことをああでもないこうでもないとずっと議論です。
 化けモンはそんな調子で泉南とか泉佐野とかテキトーにぶっ壊していくんですけど、ああこのまま南の方行って和歌山に抜けてくれるならもういいか、みたいな空気もあるんです。だってあれですよ、自衛隊のヘリでも効き目ないんだし、もうこれは無理だから黙って通り過ぎるのを待ってればええんちゃうか、みたいな。
 ここでもうちょっと山の方に行くと、富田林とかで、あれですよ、庵野や島本和彦の出身校である大阪芸大があるんですけどね。またこれがアホみたいに何もない場所ですけどね。ゴジラはきっと山とか登るの苦手なタイプだから、そっちには行きません。
 それであれですよ、和歌山あたりに行ったところで、アメリカからでっかいヘリが来るんですね。
 NASAが開発した極秘兵器みたいの。
 それで化けモンをぶっ殺すかというと、そうでもないの。なんか麻酔銃みたいので眠らせて、周りにでっかい檻を作るんですよ。殺しちゃうと研究できないから。
 「え、マジで? ここで飼うん?」みたいになるけど、それまでグズグズしていた手前、日本政府も強気で言えないの。
 で、そうこうしているうちに、和歌山あたりに馬鹿でかいゴジラの檻ができて、ゴジラランド誕生ですよ。
 研究できるのはアメリカ人だけね。
 でもゴジラは馬鹿でかいから、高野山あたりからでも見えるの。そんで、地元では展望台とか作って、ゴジラ饅頭とかで一儲けするわけですよ。中国人観光客がズワーッやってきてアイヤーでっかいねーみたいに大盛り上がりですよ。
 さんざん不条理に人が殺されて、汚いものが暴き立てられるけど、最後はゴジラ饅頭。人の噂も七十五日。
 それがね、「ウチの考えた本当に怖いシン・ゴジラ」。
 売れねーよ。

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