楽をしたい初心

 理不尽に対する怒りと楽をしたい一心とかあんまり納得しない方がいいで、「楽をしたい」という気持ちがすごく強く働いていることを書いた。本当は楽をしたいだけなのに、そのことを忘れてなんか高尚なことをやっている気分になると色々間違える。
 なんというか、人の「楽をしたい」という気持ちはすごく強いものだと思うのだけれど、なぜか自分が「楽をしたい」のだ、ということを忘れてしまうことがよくある。やっぱり「楽をしたい」というと、いかにも怠け者な感じがして説得力がないからだろうか。
 まぁ実際、あんまり露骨に「楽をしたい」と主張すると、誰も言うことをきいてくれなくて結果として楽ができない、ということはよくあるので、素直に言い過ぎるのはどうかと思うけれど、楽をしたい気持ちを隠すあまり、自分でもその本来の目的を忘れてしまうとややこしいことになる。
 どんなことでも、ある程度やりこんでみるとその世界のディテールとか具体的な作業とかに面白味が見いだせるものだ。で、それを楽しんでいるうちは良いのだけれど、やっているうちになんだか作業自体が尊いことのように思えて、初心を忘れてしまうことがある。初心というのは、「楽をしたい」ということだ。
 「初心忘れるべからず」というと、なんか高尚で気合の入った初心があったのに、月日が経つうちにグダグダになって、テキトーにダベってタバコ吸ってるだけになる、そんなことではイカン、初心を思い出せ、みたいなコンテクストを普通は思い浮かべるけれど、そもそも初心が「楽をしたい」だということもある。というか、本当のところ、その手の最初からグダグダの初心の方が多いんじゃないかと睨んでいる。
 そんな志の低い初心から始まったのに、やっているうちに段々自分が高級なことを一所懸命やっている気になって、自縄自縛でにっちもさっちもいかなくなる。真面目な人にはそんなことがあるんじゃないかと思う。
 本当は女の子にモテたいだけでバンドを始めたのに、音楽性の違いがどうとかこうとか、なんかもっともらしいことで悩んでしまったりする。
 仕事だって、本当はお金が欲しいだけなのに、生きがいだの社会貢献だのクソ嘘くさい戯れ言に振り回されるようになる。
 そういう時は初心に帰った方がいい。楽したいとかお金が欲しいとか、大概そんなもんやろ。それでええやないか。ゼニにならんなら早よやめた方がいい。

 ウチ個人は、ヘタの横好きで武術・格闘技系のことにそれなりな期間関わっているけれど、まぁ身体を使うことだし芸事だから、苦しいこともある。それは当然なのだけれど、あんまりクソ真面目に考えていると、必要以上に自分で自分を苦しめることになる。
 そんな時「初心」を思い出してみれば、ウチの場合は単に「友達に誘われたから」とか「カンフー映画みたいに飛んで回って蹴れたらカッコイイ」とか、そんな幼児みたいな理由しかなかった。そもそもがゴミみたいな初心ではじめたことなのだから、別に大層に考える必要はない。やめたからといって誰も困らない。しんどくなったらテキトーに手を抜いて、またテンションあがってきたら頑張ればいい。
 子供の頃に絵が上手で、周りの人がチヤホヤしてくれるのが嬉しくて漫画家を志したものの、さすがにプロの道は厳しく、ああ一人東京砂漠、みたいな状況になっても、別に才能のなさとか自分の芸風が世間受けしないとか、高級な悩みに振り回せれる必要はない。もちろん、自殺する必要もない。冷静に考えればロクでもない初心から始めたことなのだから、初心にかえってロクデナシとして生きればいいだけの話だ。
 ただそういう「初心」を露骨に出すと、会社でも道場でも怠け者だと思われるので、顔だけは真面目にやってるフリをして、「初心」を貫くのが賢いと思う。
 というようなことは、多分普通に育った人間なら成人する頃にはすっかり習得している当たり前の社会的スキルではないかと思うのだけれど、ウチ個人はあまりにクルクルパーで、かなり年をとるまで気づかなかった。今頃になってやっとわかってきたので、同じようにアホな人には気をつけて欲しいと思う。初心忘れるべからず!やでホンマ。

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